12/02/2014

ケーブルカーの裏側

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ケーブルカーの裏側

 サンフランシスコ観光の目玉の一つに、『ケーブルカーに乗ってフィッシャーマンズワーフに行く』、というのが定番である。(フィッシャーマンズワーフ)は「漁師の埠頭」という意味。観光地として有名だか、元々はイタリア系移民がカニやホタテなどを採っている漁場。大抵の観光客はダウンタウンのメインストリート、マーケット通り(Market street)と、パウエル通り(Powell street) にあるケーブルカー乗場の終点で列を作っている。日本のテレビのロケでも観光客達が並んでいるところや、ケーブルカーを車掌さんが回転させているところを撮影しているのをよくみる。(回転させる場所 = cable car turnabout)実際にはパウエル通り沿いをユニオンスクエアーの方に向かって散策しながら登って行くと、途中にも乗り場があり、そこには待っている人が少ないので、座るかどうかを気にしなければ待たなくて乗れる。

 観光客が多いところに行くのは苦手なので、滅多にフィッシャーマンズワーフには行かない。売っているものはお土産ばかりだし高い。普通、服や生活用品を買うならローカルの人が住んでいる、他のエリアで買うのがいい。サンフランシスコには個人経営のデザイナーブティックも多いし、現地の流行のおしゃれが出来る。でも、住んでいた時は、勉強の気晴らしに、家の近くのバス停からPolk street(ポークストリート)を通るバスに乗って、たまにフィッシャーマンズワーフに海を見に行っていた。ポークストリートは広いバンネスストリートを通るバスよりは時間はかかるが、(スノブヒル(注釈1)と言われる高級アパート街の)ノブヒルを越えて、カリフォルニアストリート辺りからオシャレな店が多くなるので、乗っていて楽しい。旅行者のフリをしてケーブルカーに乗ったり、バスを使ってチャイナタウンを通って行ったり、トローリー(路面電車)でマーケットストリートの突き当たりからフェリービルディングで北に曲がり、ピア(桟橋)沿いを行ったりすることもあった。どこを通っても景色は良く、住んでいてもいつも観光気分になるが、観光客が少ないバスに乗る方が込んでなくてのんびりした気分になった。

 ケーブルカー乗場に近い地下鉄BARTPowell(パウエル)駅は、空港からやってくる観光客が多く降りてくる駅でもあり、ホテルも集中している。周りにデパートやブランド店、アップルなどの有名メーカーの店、美術館、映画館、美術学校など、文化施設も集中している。ケーブルカー乗り場の裏手は、通称Hallidie Plaza(ヒリディープラザ)という。そこには、ストリートアーチストや、ストリートミュージシャンが、観光客相手に生活している。手づくり品を売っているストリートアーチスト達は、サンフランシスコアートコミッション(サンフランシスコ市関連団体で市の芸術•文化の活動、支援を行っている)で、ライセンス(出店許可証)をもらって毎日売っている。だがストリートミュージシャンは無許可でやっている人が多く、時折警察に注意されて追い出されることもある。普段はほぼ黙認状態だ。彼らは演奏やパフォーマンスのチップで生計を立てている。アート系屋台の背後には、hobos(ホボス)といわれる、1日中ぶらぶらしたり、徒党を組んで周りの店から商品を盗んで生活したりしている人達、トローリー乗り場の前の公衆トイレで麻薬を吸っている常習者、声を上げてBig Issueを売っているホームレスなどがいる。麻薬常習者は、人恋しいのかいつも人が集まるmarket streetに来て吸っている。明らかに中毒の人がいるが、警察がパトロールしていても、グループで無駄話してばかりで、大した事件が起こらない限りただ見ているだけ。いろんな通りで、大麻っぽい臭いがするし、日本の麻薬に対する厳しさと比べて全てがゆるい。そういうのもサンフランシスコの寛容さかと感じた。いつもパウエル駅のエスカレーターの下でビックイシューを売っていた、麻薬常習者のホームレスの女性がいた。私が2014年に訪れて、空港から着いた日には違う男性が売っていた。ホームレスは生活保護をもらっているのだが、生活保護費でまたドラッグを買ってしまう人が多いと聞く。外に出て来たと思っても、また具合を悪くしてしまう事がある。「地球の歩き方」にはこの「ケーブルカーの裏側」には近づかない方がいい、と書いてある。ただ客観的にいつも見て来たり、実際に「裏側」の人達に声をかけて来た立場からしたら、彼らもフレンドリーな住人だと思う。


注釈: 1.「スノブヒル」の「スノブ」は「気取っている」、という意味。

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